かつて喫茶店等で盛んに行われていた学生同士の議論を復活させ、「百万遍談議」として継続的に実施していきます。
授業ではありませんので、なにかこうしなければいけないという義務はなく、単に興味があるから参加して、人の話をきき、自分の考えを述べる。それだけです。
毎回のテーマに関して、あらかじめ知識が必要となるわけではありません。
唯一お願いするのは、毎回提示される「書物」あるいは「短文」を読んでくること。
「人はこんなことを考えているんだ」ということを知るだけでも楽しいですし、さらには、自分の考えを人にきいてもらうことの楽しさも、大学生に与えられたある種の特権です。
気軽な気持ちで参加してください。
いろいろな人と人、人と言葉あるいは考えの出会いが生まれることを楽しみにしています。
今回読んできていただくのは、「色覚多様性」をテーマにした文章です 。
下記、申し込みフォームに記載のリンクからダウンロードして読んでください。
「色覚多様性の話」 沼田 英治 人と社会の未来研究院 特定教授
2023年7月29日(土) 10:30~12:00
附属図書館3階共同研究室5
京都大学学部学生(正規生)先着10名
日本語
無料
こちらからお申し込みください。 (受付は終了しました)
かつて「色盲」や「色覚異常」と呼ばれた人たちが常に一定数以上存在する事実を受けて、近年、それを「異常」ではなく「多様性」として捉え始めた社会状況の変化を問うた使用テキストをもとに、そもそも多様性とは一体何を意味するのかをめぐって議論が開始されました。
「犯罪者の存在をも多様性の一つとして認めてよいのか」「多様性として認められる範囲は結局、政治家が恣意的に決定しているのではないか」といった発言を皮切りに、話題は次第に権力と規範の関係に集中するように。資本主義社会においては多様性への配慮には限界があり、財政の問題もあることから、なるべく多くの人が最低限の支援を受けられ不自由なく暮らせるよう、尊重されるべき多様性の範囲は政府が決めたほうが効率的である、との意見が見受けられました。
いっぽう、美術史の観点を持つ参加者からは、自分とは異なる色覚を有する人に対して、「ふだん見ることのできない世界を見られることへの憧れもある」としたうえで、解釈の幅を広げる一手段としての「違い」に気づく機会の重要性が提起されました。
後半には、多様性の尊重が過度になりすぎると、ある種の生きづらさが生じてしまうのでは、との指摘もなされました。とくにコロナ禍以降はSNS空間のみでコミュニケーションが完結してしまい、当事者の声が聞けないことから、他者への想像力を発揮するのに一段と労力を要している、とのコメントも。色覚という身近な話題から、多様性とはどうあるべきかをめぐり、社会のあり方について広範な議論が交わされた回となりました。
(記録:水野)
京都大学学術研究展開センター 百万遍談議担当
内線:16-5177
E-Mail : jinsha*kura.kyoto-u.ac.jp(*を@に変更してください)
※できるだけメールでお問い合わせください。