第2回京都大学—ボルドー大学共催シンポジウムが5月22〜23日、京都大学で開催され、両大学から研究者など120人以上が参加し、専門分野を越えた学術交流を深めました。また、シンポジウムに先立つ21日には、京都大学芝蘭会館稲盛ホールで特別記念講演があり、仏ボルドー大学のミカエル・ジュルデス氏が「Wine and Wood」と題してワイン樽についての化学的考察を講義しました。
京都大学学術研究支援室(KURA)は、特別記念講演を含めたシンポジウム開催を全面的に支援しました。
【ボルドー大学とのシンポジウム】
京都大学は国際戦略「2x by 2020」の一環として海外の大学と連携するため、全学的な国際シンポジウムを毎年開催しています。一方、フランス国内でも歴史ある15世紀創立のボルドー大学は、1968年に起こった5月革命の余波を受けて分かれた3大学が、2014年に新たにひとつの総合大学として生まれ変わり、世界を牽引する知の創生とこれを担う人材の育成を目指しています。
伝統と最先端知識を持ち合わせ、ともに知の創生を目指す両大学は昨年5月、第1回の両大学共催シンポジウムをボルドーで開催し、学術交流協定を締結しました。第2回の本シンポジウムでは、8つの分科会で最新の研究成果と課題を共有しました。
【ワインに関する特別講演】 特別記念講演は当初、ボルドー大学教授で世界的にも著名なワイン醸造コンサルタント、ドゥニ・デュブルデュー氏が講師として予定されていましたが、同氏が来日を目前に急病に見舞われたため、ジュルデス氏が代打で登板。ワイン熟成に必要不可欠なオーク材から作られる「樽」が、ワインの味わいにどのように関わっているのかを化学的見地から説明しました。参加者は、興味深い講演内容とワイン醸造の奥深さに魅了された様子です。特別講演後には懇親会が開かれ、両大学のシンポジウム参加者や特別講演の聴講者の間で、国や専門分野を超えた交流がありました。 |
【開会式】シンポジウム開会式は22日午前、国際科学イノベーション棟のシンポジウムホールで行われ、山極壽一総長がフランス語で、ボルドー大学のマヌエル・トゥニョン・デ・ラーラ学長が英語で、それぞれシンポジウム開催の挨拶を述べました。続いて、来賓の文部科学省高等教育局の大川昇平企画官、フランス大使館のクレール・テュオーデ文化参事官、そしてボルドー大学卒業生でもあるフランス国立科学研究センター北アジア(日本・韓国・台湾)事務所のフィリップ・コドニエ所長から挨拶をいただきました。その後、両大学学長が学生交流協定に調印。調印式後には京都大学の稲葉カヨ理事、ボルドー大学のエリック・パポン副学長から、それぞれの大学紹介がありました。
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【基調講演】
開会式後に休憩を挟んで、山極総長とボルドー大学のステファニー・デベット氏が、それぞれ基調講演を行いました。山極総長は、「Evolution of Human Sociality: What We Can Learn from Gorillas」と題し、ご自身が長年にわたって観察し続けてきたゴリラの家族構成などについて、ヒトと比較する考察を講演。デベット博士は、脳小血管における障害の発生要因について、遺伝学や脳神経学といった観点からの研究結果を発表しました。両者の講演内容はマクロとミクロの視点でヒトを対象としており、今後の両大学の学術交流が幅広いものになることを示唆しています。
【各分科会】
5月22日午後から23日午前にかけて、国際科学イノベーション棟で以下の各テーマの分科会がありました。分科会で議論された内容は、23日午後の閉会セッションで発表され、より具体的な学術交流の道筋をつけることができました。
分科会テーマ:
「Urban Governance(都市政策)」
「Science for Cultural Heritage(文化財科学)」
「Computer Science and Production/Logistics Systems(情報科学と生産・物流システム)」
「Material Science(材料科学)」
「Nutrition and Food Science(栄養・食品科学)」
「Medical Imaging(医学画像)」
「Public Health(公衆衛生科学)」
「Academia-Industry Collaboration for Future Health Promotion(未来型健康促進の産学連携)」
【エクスカーション】
分科会によっては、新しく完成した国際科学イノベーション棟の展示室を産学連携の観点から見学したり、大学外へのエクスカーションに出向いたりするなど、机上の議論にはとどまりませんでした。
分科会「未来型健康促進の産学連携」の参加者は、シンポジウムの会場でもあり「活力ある生涯のためのLast 5Xイノベーション拠点」でもある国際科学イノベーション棟に設置されている展示コーナーを見学。拠点のプロジェクトリーダー、パナソニック株式会社の野村剛常務取締役と、京都大学名誉教授の岩田博夫機構戦略支援統括部門長が案内しました。
また、「文化財科学」の参加者はユネスコの世界文化遺産に登録されている「仁和寺」に移動し、観音堂の半解体工事を始めとする大修理事業の様子を見学。世代を超えて受け継がれている文化財についての知見を広めました。
このほか、「栄養・食品科学」の参加者は、京都市伏見区の月桂冠大倉記念館で特別講義を聴講しました。講師は月桂冠総合研究所の秦洋二所長でした。秦所長は月桂冠株式会社の取締役・製造本部長で、京都大学でも授業を担当しています。ワイン産地のボルドーから来日した専門家を前に、秦所長は「麹」を用いた日本酒醸造のプロセスや特徴などを説明しました。講義後は、シンポジウムで特別講演を担当したジュルデス氏が、ブドウとワインの関係を例に出しながら日本酒の「味」を決定づける要因に関する質問を投げかけるなど、参加者から鋭い疑問が相次ぎました。
講義後には他の分科会参加者も合流し、日本酒に関する展示品を見学。日本酒とワインという醸造酒を生み出す土地にある大学らしい交流会となりました。
【閉会式】
閉会式は5月23日午後、国際科学イノベーション棟シンポジウムホールで開かれました。閉会式に移る前に、各分科会の担当者が議論内容や今後の具体的な計画などを発表し、他の参加者たちと情報を共有しました。その後、閉会式では稲葉理事とヴァンサン・ドゥセ副学長から閉会の挨拶があり、短くも実りあるシンポジウムが終了しました。
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