京都大学 学術研究展開センター Kyoto University Research Administration

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アカデミックデイ2013でのアカデミックデイ賞が決定しました!

01.29 (Wed)2014

2013年度に開催した「京都大学アカデミックデイ」では、出展研究者に贈られる「京都大学アカデミックデイ賞」を初めて設けました。賞を設けた理由は、こういった活動に参加し、さらによりよい対話を目指した研究者が評価される(価値をつけられる)仕組みを作ることです。今後、研究活動の一環として「国民との科学・技術対話」活動が普及・定着すること、また活動が研究者にとって負担にならないことを目指し、試みを始めた企画です。
 
来場者アンケートの中に、こんな質問を設けました。
「本日の「畳にコタツで膝詰め対話」と「ポスター前で立ち話」の中で、あなたがよかったと思うのはどの出展ですか?
もしその出展になにか「賞」をプレゼントするなら、どんな名前の賞にしますか?」
 
この質問で一番コメントを多く集めた出展研究者が、今年度の「京都大学アカデミックデイ賞」の受賞者です。
 
 
 
 
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      「京都大学アカデミックデイ賞」の受賞者
      出展名:「右利きのヘビと左巻きのカタツムリ」
      出展代表者:細将貴(京都大学白眉センター 特定助教)さん
 
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記念すべき第1回目の受賞者に、“ヒーローインタビュー”にお付き合いいただきました。
 
       
 インタビューア:水町衣里・江間有沙
      写真:元木環
 
 
 
―まずは、受賞の感想をどうぞ。
来場者のみなさんに喜んでいただけた、というのは、とても嬉しいです。
アカデミックデイ当日もお話をした来場者の方がおもしろがって話を聞いて下さって嬉しかったのですが、それだけではなくて、後からもこんな形で評価を受けることができる、というのはまた嬉しいですね。アンケート用紙にコメントを書いて下さったというのは(対面じゃないから)お世辞ではないでしょうし。
 
 
 
―アンケート用紙に書かれていた賞の名前も見てみましょうか?「実に面白かったで賞」や「カタツムリがかわいかったで賞」などいろいろなコメントが届いていますね。
「話がトリビアとして直感的に楽しい」ということと、「サイエンスとして興味深い」ということ、その両方が入っているコメントのような気がするのでありがたいです。
「生き物の進化にはまだまだ面白いことがたくさんあるよ。新しく発見されることもたくさんこともあるんだよ。」ということを感じていただければ、と思って出展していたので、「ワクワクしたで賞」や「こんなことをよく気づいたで賞」のようなコメントも純粋に嬉しいです。
 
 
 
―細さんには、事前説明会にもご参加いただきました。いかがでしたか?
出展を申し込む前に、ウェブに掲載されていた去年の写真やポスターで、アカデミックデイの雰囲気はなんとなく分かりましたが、もう少し当日の様子を知りたくて、事前説明会に出ることにしました。事前説明会では、他の出展研究者のタイトルリストなどを受け取りました。これを見て、みなさんがだいたいどんなことを用意しようと思っているのかを知ることができ、安心できました。
 
 
 
―細さんの出展名「右利きのヘビと左巻きのカタツムリ」は、なかなか魅力的ですね。これまでにも、講演会などでお話をされたことがあるのですか?
そうですね。学会主催の公開講演会やサイエンスカフェなど、これまでに何回か話をしに行ったことがあります。芸術系の学部生向けに特別講義をしたり、「生きものまーけっと」という生物をモチーフにした雑貨を扱うイベントでの講演をするという経験もあったりするのです。なので、事前説明会前から、どんなタイプのタイトルにしたらいいのかという、ある程度の感触はありました。
ただ、ポスター形式で一般の方向けにお話をするというのは初めてでした。
 
 
 
―ポスターを作るときに何か工夫をされました?
今回のポスターの構成(研究の背景→仮説の説明→仮説の検証結果→結論)は、学会の時とほぼ同じでした。学会のポスターの場合は、研究の背景のところは、ほぼ文字だけで表現します。ですが、今回は、研究の背景部分に、ビジュアルを多用することにしました。その他は、文字は大きく、写真も大きく、細かい説明は省く、ということを心がけました。一見スカスカに見えるぐらいでいいかなと。
 

 

―準備して行ったのは、ポスターだけですか?
小道具をいくつか持って行きました。まずは、実物のカタツムリの殻ですね。右巻きのもの、と、左巻きのもの、の両方を用意しました。話のつかみに便利でした。他にも、Amazonで購入したカタツムリの模型も持って行きました。ヘビの標本は、怖がられるかなと思って、持っていくのをやめました。やっぱり、モノがあると、イメージしてもらいやすいので、話がしやすいです。
他には、ノートPCに、動画を入れて持って行きました。ヘビがカタツムリを襲う動画、なのですが、これを流しっぱなしにして机の上に置いておきました。この動画が人をひきつける力も大きかったですね。
 
          
 
 
 
―細さんの展示は、来場者の方が群がるというよりは、常に一定程度人がいたという印象でしたが、話し方で何か工夫をされていましたか?
動画や模型に引き込まれて数人集まったら、10分から20分くらい説明をし、その後は質問を受け付けるというスタイルでやっていました。後ろに人がたまってきたら、さりげなく次の説明をはじめる、とかしていましたね。だからか、あまり長居される方はいらっしゃらなかったかも。
イベントに参加しようと思った動機が、学内外のいろんな人に研究を知ってもらいたいと思っていたことだったので、たくさんの人に出会えてよかったです。ポスター前での立ち話だと、距離が近いので、講演会では質問してくれそうにないことも聞いてくれた気がします。
 
 
 
―来場者の方とのやり取りで、何か印象的なものはありますか?
よく聞かれたのは、「この研究は人間にどう関係するの?」「私たちの暮らしに役立つの?」といったものでした。ちなみに、この質問は、昔、博士論文発表会の後、行きつけの定食屋(ちなみに、「キャラバン」というお店)のおっちゃんにされた質問でもあるのです。当時、そんなことを言われたのは初めてで、主査より厳しいし!と思った覚えがありますね。それ以来ずっと答えを考え続けてきました。
最近の私なりの答えは、「ヒトも生き物で、これまで進化してここまで来たのです。ヒト以外の生き物について研究することで、ヒトの進化の解明につながるような新しいアイディアを得ることもあるのでは?」というものです。
私の研究しているカタツムリの右巻き/左巻きは、たった1個の遺伝子の変異で変わってしまいます。その変異が、他個体と交尾できなくなる性質の進化(種分化)と同時に、ヘビに対する適応進化にも大きな効果を発揮することが私の研究で分かりました。このように、1個の遺伝子がその生物にものすごく影響を及ぼすというのは、「小さな変異が積み重なって生物は進化する」という定説とは逆の現象です。ここまで説明して、面白い!と言ってもらえた時には、やった!と思いました。こんな深い話ができるところまで、お客さんの興味をひき続けることができた、ということですから。
 
 
 
 
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   投票数の多かった出展と受賞理由の賞の名前
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「右利きの蛇と左巻きのカタツムリ」:細将貴(京都大学白眉センター 特定助教)
・人間の謎にも応用してほしいで賞
・えいぞうがすごいで賞
・タイトルでひきつけられるで賞
・ヘビ、イイヨ、かっこイイヨで賞
・科学のひらめき賞
・タイトルでひきつけられるで賞 … 他
 
「ヒトの記憶と脳のはなし」:月浦崇(京都大学大学院人間・環境学研究科 准教授)
・質問しやすかったで賞
・自分を見つめ直したで賞 … 他
 
「火星移住の人文社会科学的検討」:磯部洋明(京都大学学際融合教育研究推進センター 特任准教授)
・興味関心をより深くしてくれたで賞
・いつもとは違う考え方が面白かったで賞 … 他
 
「ヒトの心のはたらきの発達」:鹿子木康弘(京都大学大学院教育学研究科 特定助教)
・人生に影響を与えてくれた賞
・不思議で魅力的で賞 … 他
 
「消えた父の遺産」:西村芳樹(京都大学大学院理学研究科 助教)
・話がおもしろくて分かりやすかったで賞
・研究者は大変ということを教えてくれたで賞 … 他
 
「不便益:不便の効用を活かすシステム論」:平岡敏洋(京都大学大学院情報学研究科 助教)
・色々なアイディアを実用化していってほしい賞
・発送の転換にワクワクしたで賞 … 他
 
「聖徳太子ロボットを作る」:奥乃博(京都大学大学院情報学研究科 教授)
・初心者によく説明してくれアリガトウ賞
・将来を考えさせてくれたで賞 … 他
 
「魚の“細胞”や“組織”を覗き見しよう」:飯田敦夫(京都大学再生医科学研究所 助教)
・実物が見れて興味が湧いたで賞
・魚が色々知られて恥ずかしがっているで賞 … 他
 
「iPS細胞の“いま”と“これから”」:中川誠人(京都大学iPS細胞研究所 講師)
・科学者気分になれたで賞
・研究をがんばってほしいで賞 … 他
 
「体感!キノコから見た多様性」:兵庫県立御影高等学校 環境科学部生物班
・高校生なのにがんばってる賞
・キノコっ子にならせてくれたで賞 … 他

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