京都大学学術研究支援室(KURA)は2017年5月29日(月)、京都大学百周年時計台記念館で、リサーチ・アドミニストレーター(URA)の活動を紹介するシンポジウム、「京都大学URA成果公開シンポジウム2017:京大式〜研究力強化の本質」を開催しました。「大学の研究力」に関する本質的な議論を目指した3部構成のシンポジウムで、参加者は全国の大学を含めた研究機関や一般企業など75機関から220人以上が参加。研究者による講演や、研究者と文部科学省研究振興局職員を交えたパネルディスカッションを通じ、「研究力」そのものについて改めて考える機会となりました。
日本の大学における「研究力の低下」が騒がれる昨今、どのような対策が「研究力の強化」に繋がるのかは、日本の大学が抱える共通の課題です。その一方で、「研究力」とは一体何なのか、誰もが納得する明確な定義はありません。そこで、京都大学学術研究支援室(KURA)が研究力強化に資すると考えて取り組んできた事業の成果を公開し、これをもとにした各方面の方々の議論で、研究力強化の本質と研究大学におけるURAの役割について考えることを目的に企画しました。
議論の概要(ポイント)
「研究力」の強化を目指し、京都大学は文部科学省による研究大学強化促進事業の支援を受けています。その事業におけるKURAの活動を、レクチャーと参加型ワークショップ、ポスターセッションで披露しました。レクチャーとワークショップは、京都大学付属図書館で開催している「研究支援のアンテナショップ KURA HOUR」の3プログラムをダイジェスト版で公開。ポスターセッションでは、9人のURAが自分たちの活動を1分間のライトニングトークでも紹介しました。また、ポスターセッション会場では、研究大学強化促進事業の支援でKURAが実施する学内研究助成プログラム、「『知の越境』融合チーム研究プログラムSPIRITS」の平成27年度採択プロジェクト成果報告会を同時開催することで、研究者とシンポジウム参加者が直接、議論・対話できる場を設けました。以上の企画を通じて、第1部は参加者が「京大式」の多彩な研究力強化の取り組みに触れる時間となりました。このほか、KURAが制作しこれまで門外不出だった「科研費の教科書」の配布場所には多くの参加者(60機関/90人)が詰めかけるなど、日本のURAシステム定着化に向けた京都大学の先導的な役割に期待が寄せられました。
「研究力」とは何か ──。本質的な議論を目指した第2部は、KURA室長の佐治 英郎・研究担当理事補による開会の辞と趣旨説明で開幕し、開会挨拶で山極壽一総長が、「京都大学では、大学と社会を繋ぐために学術分野を超えた幅広い知識をもつURAがさらに必要だ」と訴えました。来賓として招いた文部科学省研究振興局学術研究助成課の鈴木敏之課長の挨拶後は、大阪大学元副学長でリサーチ・アドミニストレーター(RA)協議会副会長の池田雅夫氏が「研究力強化の本質とは?」と題した基調講演で登壇。続いて、京都大学の研究者を代表し、東南アジア地域研究研究所の河野泰之所長と研究担当理事補の北川宏理学研究科教授、文学研究科の出口康夫教授が講演しました。
その後、URAと事務職員が「KURA報告」で、KURAの研究強化に向けた取り組みを紹介し、京都大学が掲げる『越境する知の拠点』の構築に向けた様々な取り組みを報告しました。紹介した取り組みは「越境」をキーワードに、大学経営の壁を越える『IR』、地域・文化を越える『国際』、学問領域を越える『学際』、組織・制度の壁を越える『RDP(Research Development Program)』、アカデミアと社会の壁を越える『産学連携』、逆風を乗り越える『人社系』、事務組織の壁を越える『事務』です。
以上の講演とKURA報告を踏まえたうえで、パネルディスカッションに進みました。パネリストには、池田氏と北川教授、佐治室長のほか早稲田大学研究戦略センターの松永康教授を迎え、京都大学総合博物館の塩瀬隆之准教授がファシリテーターとして討論をまとめました。また、鈴木課長もコメンテーターとして参加しました。各パネリストからは、研究力の「本質」と研究大学におけるURAの役割について多くの提言がありました。特に、各大学の研究力強化に向けた取り組みの中でも、URA人材が充実して体制が整い、若手人材が憧れる職種となるURAのロールモデルが構築されれば、学内外から高い研究力があると評価されると意見が寄せられました。
パネリストは以上の提言のほか、今回のシンポジウムのように成果を積極的に発信している点を高く評価。京都大学など日本のURAリーディング大学が他大学のURA・職員に対して、人材育成カリキュラム等を提供することで、研究マネジメント人材を養成し、日本全体の研究力強化への貢献に期待を寄せました。 最後に、研究・企画・病院担当理事の湊長博副学長が、「URAの役割に対する共通認識を醸成することで、URAによる研究支援に対する取り組みがより一層強化され、それらは大学の経営判断にとって有用な情報になり得る」と期待をこめ、盛況のうちにシンポジウムが終了しました。
第2部までの内容に引き続く議論ができる場として、研究力強化を担う全国の大学URAや研究機関の職員など約80人が集い、組織や機関を超えた交流が深まりました。
アンケート結果を含めた報告書はPDFファイルで公開しています。
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