京都大学学術研究支援室(KURA)は2017年2月28日から3月1日にかけ、英国とオランダからリサーチ・アドミニストレーター(URA)3人を招き、URAのスキルアップと国際的なネットワーク構築を目的としたワークショップを開催しました。ワークショップは、学内の研究者にも有益な情報提供となるよう3つのテーマを選び、3回に分けて実施。2日間でしたが、充実したネットワーキングの時間を持つこともでき、述べ44人の参加者は招聘講師とともに、交流を深めました。
招聘講師:左からSimon Glasser氏(英ブリストル大学Research and Enterprise Development [RED])、Simon Gray博士(英ブリストル大学Research and Enterprise Development [RED])、Aletta Debernardi博士(オランダ・ユトレヒト大学 Advanced Research Center CBBC)
ワークショップのテーマと詳しい内容は以下の通りです。
日本の一研究室の中で、教授や准教授が若手に対して教育するというピラミッド型の伝統的な人材育成のスタイルは、大学法人化以降次第に機能しなくなってきています。次世代の研究発展を担う若手研究者の育成を、誰が、どのように行うのか。大学における大きな課題になっています。英国では、若手研究者を教育・育成するための専門的な組織をもつ大学が増えています。そのひとつが、ブリストル大学のBristol Doctoral Collegeです。京都大学では、K-CONNEX(京阪神次世代グローバルリーダー育成コンソーシアム)が主体となり、若手研究リーダーを育てるための様々なプログラムを試行、実施しています。ワークショップではこういった育成プログラムが詳しく紹介されました。
参加者の声
・とてもinformativeだった。オンラインにある資料や関連教材があれば、教えてほしい。
・育成プログラムがあることは素晴らしいが、受講できる対象者が限られている。受講対象にない多数の研究者はどうしたらよいか?
・若手のポストがtenureでないことに根本的な問題がある。
※KURAは、今後も変容を続ける大学の構造を見極めつつ、どの年代にとっても居心地がよく、最大の成果が生まれるような研究環境の実現に努めます。
京都大学の女性研究者比率は、15年前から約2倍に増えました。一方で、日本の大学における女性研究者比率は、国際的に見れば極めて低い水準にとどまっています。今後、大学におけるジェンダーの不均衡を緩和するために何をすべきなのかを考えるため、欧州で女性研究者比率がもっとも低い(それでも日本よりは高い)オランダにおける、実際の成功事例と失敗事例を講師が紹介しました。講演後は参加者全員でフラットに意見を交換しました。
参加者の声
・オランダの調査で、同じ教授という職階にあっても男性と女性で平均の給与が随分違う(女性の方が低い)というのが興味深い。
・出産などでブランクをあける女性研究者に、再度自信を与えるような研修や啓蒙の機会が欲しい。
・京都大学にもメンター相談の制度がある*ことを私は知らなかった。こういう情報をきちんと伝えて欲しい。
* 京都大学男女共同参画センター メンターによる相談
※KURAでは女性研究者だけではなく大学全体のワークライフバランスの向上を目指し、これからも現場の声に耳を傾けます。
大学にグローバル化の波が押し寄せ、研究は近年、急速に国際化しています。しかし、国際的な共同体制を築くのは決して容易ではありません。国際プロジェクトのマネジャーとして長年の経験を持つ講師が、自身の経験をもとに、「ボトムアップとトップダウンの意識のバランスが重要」「相手の文化を理解し、時には礼儀正しさよりも分かりやすさを重視して」など、現場のノウハウを伝えました。また、コミュニケーションスキルの向上のため、ワークショップ後半にはケーススタディを用いたロールプレイイング・ゲームも行いました。
参加者の声
・英国にとって、別の国と共同研究する場合のメリットとはなにか?
・ロールプレイイングを実際にやってみることで、事前に話題のきっかけを準備しておくことの大切さや、相手の反応に合わせた会話の仕方など、とても勉強になった。
※今後も海外ファンドへの共同申請などの機会はさらに増えていくと期待されます。KURAは研究支援組織として、研究の国際化を支援する有効な方策を考え続けます。
ワークショップの様子
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