京都大学学術研究展開センター(KURA)人文・社会系部門は、2023年度に行った新規事業「京都大学における人文社会科学を中心とした融合研究の先例調査」の成果として、『Aspiring to Transcend――京都大学における人文社会科学を中心とした融合研究の先例調査報告書』を2024年3月25日に発行しました。
この調査は、京都大学の「自由の学風」のもとで蓄積されてきた人社分野の融合研究に注目し、それがどのように行われてきたかを分析することで、今後の研究推進の方針を検討しようとするものです。『京都大学百年史』等の記述から、文学部における哲学の京都学派、人文科学研究所、東南アジア地域研究研究所、総合人間学部と人間・環境学研究科、総合生存学館、学際融合教育研究センター、法学研究科附属法政策共同研究センターの7つの部局等を対象に選び、部局刊行物調査とインタビューを行いました。
報告書では調査結果をもとに、人社系中心の融合研究とは、相互に触発し合う学問分野間の対話そのものであり、この対話によって作り出される議論の空間こそがその研究のための方法であるとともに、学界と社会のパラダイム転換を促す成果でもある、と考えました。そのうえで、研究者の内に発する超出への意志を人社系の融合研究推進の前提とすること、研究者の既存分野からのさまざまな超出を評価・可視化すること、自由の学風を涵養すること、対話の場の設定と普遍的な問いの発掘、メディアやプラットフォーム整備により社会との対話を促進することを提言しています。
本部門では、この報告書で得られた知見をもとに業務を見直すだけでなく、さまざまに展開させることを考えてゆきます。