京都大学学術研究支援室(KURA)は10月13日(木)、環境省から京都大学野生動物研究センター(WRC)に出向中の滝澤玲子特定助教を講師に迎え、第18回KURA研究会を開催しました。テーマは「観光省の組織概要と自然系職員の業務について」で、環境省が担う多様な業務とその役割の重要性について、お話を伺いました。
滝澤特定助教は平成18年、自然環境の保全に関わる「レンジャー」と呼ばれる自然系職員として環境省に入省。本省を皮切りに北海道や九州の地方環境事務所で経験を積んだ後、平成27年度から3年間の予定で京都大学に出向中です。
研究会の冒頭、滝澤特定助教は「公害×予防」と「地球×未来」、「あらゆる分野×変革」、「東日本大震災×未知」というキーワードで環境省を簡潔に紹介。公害から始まった局所的な環境問題が地球環境問題へ変わり、さらには放射性廃棄物の処理問題も加わったことに伴い、公害対策の規制に重点を置いた環境庁から、政策面に力を入れる環境省へ移行した歩みについて解説がありました。
環境省の組織概要や役割についての説明では、約3000人と他省庁に比べて少ない職員が、環境保全政策を始めとする生物多様性の確保だけでなく、自然公園の保護や整備、原子力利用の安全確保など、幅広く多岐にわたる業務を担当している状況に、参加者から驚きの声が上がりました。
また、滝澤特定助教のような自然系職員は、国立公園に関する法整備などの事務的な業務だけではなく、トキやヤンバルクイナといった希少種の保護や動植物の管理、国立公園にある登山道やビジターセンターの整備など、現場での任務が求められるとの説明があり、第一線での経験を交えたリアリティーあふれる話題に、参加者は興味深く聞き入っていました。
滝澤特定助教は最後に、「今後は京都大学と深い接点がある世界自然遺産の屋久島で、どのような取り組みが地域で行われてきたのかを調査したい。沖縄の山原(やんばる)地域における生物多様性と人との関わり、また伝統的な土地の利用法についても研究していきたい」と今後の展望を述べ、講演を締めくくりました。
講演後の質疑応答では、環境省の公募に関する質問や環境問題への具体的なアプローチ方法についての意見が出るなど大いに盛り上がり、環境省に対する新たな知見を得る、実り多い研究会となりました。
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滝澤特定助教 | 研究会の様子 |